SDG企業認証とBeyond 2030-HLPF 2025が伝えるメッセージ【第1回】
2026/01/28
本連載では、2025年7月に開催されたHLPF(国連持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム)の議論を起点に、
企業認証とサステナブルビジネスの最新潮流を三回に分けて紹介する。
第一回では、HLPF2025の全体像と、企業にどのようなメッセージが送られたのかを振り返りたい。
2025年7月14日から23日にかけて、ニューヨーク国連本部で「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)2025」が開催された。HLPFは2030アジェンダ実現の進捗をフォローアップする国連の中核フォーラムであり、今回は「持続可能で包摂的かつ科学的根拠に基づく解決策の促進(誰一人取り残さないために)/Advancing sustainable, inclusive and science-based solutions to leave no one behind」をテーマとして掲げた。各国政府代表に加え、企業や市民社会など幅広いステークホルダーが参加し、SDGsの進捗と課題について活発な議論が行われた。
HLPF2025における国連総会ホールでの会合風景。
各国代表や市民社会、企業の代表が集まり、ポスト2030を見据えた持続可能な開発の方向性について議論が行われた。
出典:IISD/ENB – Kiara Worth, https://enb.iisd.org/high-level-political-forum-hlpf-2025-21jul25
今年のHLPFではSDG3(保健)、SDG5(ジェンダー平等)、SDG8(働きがいと経済成長)、SDG14(海の豊かさ)、SDG17(パートナーシップ)の5分野が重点レビューされ、39国が自発的国家レビュー(VNR)を実施した。日本も4年ぶり3回目のVNRを提出し、高齢化や地方創生、気候変動対応など国内課題への取り組みと、ステークホルダー協働の重要性を強調した。特にNPO代表や企業経営者、学識者が登壇し、官民協働の実践事例や提言が共有されたことが特徴である。また、科学界を代表してJSBO理事長で慶應義塾大学教授の蟹江憲史氏も参加し、日本の取り組みを国際社会に発信した。
HLPF2025におけるVNR(自発的国家レビュー)審議会合の様子。各国代表が自国の進捗を報告し、
持続可能な開発目標の達成に向けた課題と展望について議論が行われた
出典:IISD/ENB – Kiara Worth, https://enb.iisd.org/high-level-political-forum-hlpf-2025-21jul25
フォーラム全体を通じて浮かび上がったのは、SDGs達成の遅れに対する強い危機感と、それを乗り越えるための協調行動の必要性である。国連事務総長の報告では、SDGsターゲットの達成見込みはわずか18%に留まり、半数は遅延、18%は悪化と指摘された。紛争、気候危機、パンデミックの影響などが各国の努力を阻んでいる現状が共有された一方、「困難にも諦めず進むべきだ」という前向きなリアリズムも示された。最終日には大臣宣言(Ministerial Declaration)が採択され、貧困と気候変動を「最大の課題」とし、平和と開発の不可分の関係を再確認した。採択に際し米国とイスラエルが一部文言に反対したが、最終的には賛成154票で承認された。議長を務めたボブ・レイ(Bob Rae)は「コンセンサスとは必ずしも全会一致を意味しない」と述べ、「多国間主義は死んでいない」と強調した。
HLPF2025のメッセージは明快である。すなわち「行動の加速なくしてSDGs達成なし」、そして「政府・企業・市民社会の共同責任による変革こそが道を開く」という希望である。特に、経済や雇用に直結するSDG8やパートナーシップを担うSDG17の停滞は、企業の一層の参画なくして前進できないことを示している。
HLPF2025の特別イベントとして開催された「2025 SDG Global Business Forum」の案内。企業と政策立案者が連携し、
持続可能な未来のための解決策を共創することを目的とした。
出典:UNDESA, https://sdgs.un.org/2025-hlpf-special-events
HLPF2025の議論全体では、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、国際雇用主機構、WBCSDなどと共催された「SDGグローバル・ビジネス・フォーラム」が注目を集めた。このフォーラムには各国政府高官や企業代表が参加し、「企業はSDGs達成の完全なパートナーである」との立場が繰り返し確認された。特に生活賃金(living wages)、包摂的雇用(inclusive employment)、デジタル移行(digital transition)などが優先課題として示され、企業が行動するための具体的指針として共有された。
HLPF2025では、SDGsの遅れを挽回するために企業が不可欠なパートナーであることが強調された。
次回は、この流れの中で注目された認証制度や国際的な動向を具体的に取り上げる。
著者情報:官 恒(慶應義塾大学 政策・メディア研究科/蟹江研究室 修士課程2年)
